JONES DAY Alert
February 2016
JONES DAY
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欧州委員会、製薬業界における特許和解のモニタリングに関する第6次報告書を公表

2015年12月2日、欧州委員会競争総局(以下「欧州委員会」という。)は、製薬業界における特許和解のモニタリングに関する第6次報告書を公表しました。欧州委員会は、競争法の観点から詳細な審査を要する特許和解の件数は低い水準に安定してきているものの、モニタリングにもかかわらず、未だ和解契約が締結されているとしています。

背景
製薬業界における特許和解契約とは、顕在化した又は潜在的な特許に関連する紛争について和解する契約をいいます。これらの契約は、紛争を終了させる合法的な手段として一般的に許容されています。しかしながら、欧州の競争当局は、先発品製造業者と後発品製造業者との間のある種の特許和解契約が競争を制限しており、違法となり得ると考えています。欧州委員会の懸念の根拠は、先発品製造業者が後発品製造業者に対して、後発品参入の結果得られる潜在的利益を超える経済的利益の供与の申し出を行っているという点にあります。これらは、一般的に「pay-for-delay settlement agreements」と呼ばれています。

遡ること2009年に、欧州委員会は、製薬業界における市場慣行の詳細な調査を行い、当該業界調査の報告書を公表しました。その報告書の中で、委員会は競争に係る懸念を生じ得る契約として「pay-for-delay settlement agreement」を挙げています。この懸念から、委員会は特許和解契約のモニタリングを続けており、そこでの発見事項について毎年報告書を発表しています。

欧州委員会は、業界に関する調査を行った後個別の法執行を立件することが多いところ、欧州委員会はLundbeck (2013)、J&J/Novartis (2013)及びServier (2014)の3件の「pay-for-delay settlement agreement」に対して禁止命令を発令しました。Lundbeck 及び Servierの件については上訴されており、欧州委員会が当該契約が競争制限的効果を有することを示さなければならないのか(法執行機関にはより重大な立証責任が求められる。)、それとも、当該契約が原則的に競争を制限するもの(制限を「目的としている」)とみなせるのかという点が、重要な争点になっています。

特許和解のモニタリングに関する第6次報告書
第6次報告書(2014年1月1日から2014年12月31日までの期間を対象)において、欧州委員会は欧州経済圏における76件の先発品製造業者と後発品製造業者との間の特許和解契約を分析し、後発品製造業者による自社製品の上市の権能を制限しない契約(カテゴリーA)と制限する契約(カテゴリーB)の2種類に分類し、さらにカテゴリーBの契約を、先発品製造業者から後発品製造業者への利益移転を含まないカテゴリーB.Iと利益移転を含むカテゴリーB.IIに分類しています。カテゴリーB.IIの契約は、競争法の観点からの最高水準のモニタリングの対象となされており、「pay-for-delay settlement agreement」もこれに含まれています。

欧州委員会は、76件の契約中39件(51%)が後発品製造業者の市場参入を制限しており、この39件中、9件が先発品製造業者から後発品製造業者への利益移転(カテゴリーB.II)を含んでいることを確認しました。過年に比べ「pay-for-delay settlment agreement」の件数は低い水準で安定しており、欧州委員会は、反競争的な特許和解に対する公表されたモニタリングは企業が和解を締結することを一般的に制限するものではないことを付言しています。

考察
本報告書は、未だに製薬企業が競争法の観点から問題をはらんでいる方法により特許関連紛争を解決していていることを示しています。

リスクを軽減するためには、特許和解を検討する企業は、(i)後発品製造業者の市場参入を制限する条項(例えば「不争」条項又は「非競争」条項)や、(ii)後発品製造業者に利益移転をする条項(例えば、一時金払いや後発品製造業者の資産の購入)を含まないようにすることが考えられます。他方で、訴訟への関与を望まない当事者の意向を勘案することにより「pay-for-delay settlment agreement」を合法的な知的財産権の行使として評価しうる限りにおいては、これらのセーフガードは過剰であるとも思われます。





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2016年3月3日
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